ふと、久しぶりに『キャプテン翼』の中学生編を読み返していて、猛烈な違和感を覚えました。
ご存知、主人公の大空翼が所属する「南葛中学校」。
ここ、冷静にメンバー表を見ると異常なんです。
• 大空翼(10年に一人の天才)
• 修哲小の全国優勝メンバー(井沢、来生、滝、高杉)
• 石崎くん(ガッツのある代表クラスのDF)
これ、中学生サッカー界における「銀河系軍団」ですよ。
全国制覇した南葛SCのスタメンが、ほぼそのまま公立中学に入学している。
それだけのタレントを抱えながら、なぜ南葛中にはまともな監督(指導者)」がいなかったのでしょうか?
ライバルの東邦学園には北詰監督という厳しい指導者がいたのに、南葛中のベンチにいるのは、オロオロと応援するだけの顧問の先生だけ。
大人の視点、あるいは組織運営をしているプロデューサー的な視点からこの「南葛中の謎」を深掘りしてみたら、意外な組織の構造的欠陥と、一人の男の「ヤバさ」が見えてきました。
1. なぜ「監督不在」でもプロジェクトが回ったのか
普通、これだけのスター選手が集まれば、エゴがぶつかり合ってチームは崩壊します。しかし南葛中は機能した。理由は2つあります。
一つは、「現場のリーダー」が優秀すぎたこと。
大空翼というキャプテンが、戦術決定からメンタルケア、現場での軌道修正まで、ピッチ上ですべて完結させていました。
もう一つは、修哲トリオ(井沢・来生・滝)の完成度。
彼らは小学生時代に徹底的な基礎教育を受けており、阿吽の呼吸で動ける「完成されたユニット」でした。
これをビジネスの現場に置き換えると、「PM(プロジェクトマネージャー)は頼りないが、リードエンジニア(翼)が天才で、古参メンバー(修哲)も仕様を完璧に理解しているため、奇跡的に回っているプロジェクト」です。
会社(学校)側からすれば、「結果(優勝)が出ているんだから、わざわざ高いコストをかけて外部からプロの監督を呼ぶ必要はない」という判断になります。
つまり、彼らの優秀さが、逆に「組織的な指導体制の強化」を阻害していたというパラドックスです。
2. そもそも、なぜ彼らは「公立中」にいるのか?
ここが最大のミステリーです。
修哲小は私立で、裕福な家庭の子が多い設定です。本来ならエスカレーター式に進学するか、あるいは全国優勝の実績を引っさげて、私立の強豪校からスカウトの電話が鳴り止まないはずです。
なぜ彼らは、地元の公立・南葛中に揃って入学したのか。
可能性として考えられるのは「行政の壁」です。
南葛SCのメンバーでも、浦辺や岸田たちはライバルの大友中に進学しています。つまり、「スカウト合戦」よりも「公立中学の学区」のほうが権力が強かったという、妙にリアルな事情が見え隠れします。
あるいは、修哲のプライド高きエリートたちが、他校の好条件を蹴ってでも「翼と一緒にサッカーがしたい(あいつに借りを返したい)」と願ったのか。もしそうなら、少年漫画としては100点満点の熱さです。
3. すべての元凶? ロベルト本郷の罪
そして、この「監督不在」「進路の謎」の糸を引いている黒幕。
それこそが、翼の師匠・ロベルト本郷です。
大人の視点で見ると、当時のロベルトの行動はコンプライアンス的にも人材育成的にもかなり「アウト」です。
彼は翼に「優勝したらブラジルへ連れて行く」と約束していました。
翼はその言葉を信じていたからこそ、国内の強豪校への進路活動を一切していなかったはずです。
しかし、ロベルトは何も言わずに一人で帰国しました。
結果、翼はどうなったか?
「進路白紙」の状態で放り出されたのです。
時期的に私立の受験やスカウトの話は終わっていたでしょう。翼には「学区内の南葛中に行く」という選択肢しか残されていなかった。いわば、究極の「梯子外し」です。
さらに罪深いのは、その後3年間、「ノート一冊」だけで放置したこと。
一番伸びる中学生の時期に、リモート指導すらなく、書き置きのマニュアル(ノート)だけ渡して音信不通。
ビジネスで言えば、新卒の超エース級人材に「あとはこのWiki読んどいて」と言い残して上司が退職したようなものです。
結論:南葛中は「完全自律型組織」だった
しかし、皮肉なことに、この「ロベルトの放置プレイ」と「学校側の無策」が重なった結果、南葛中は「大人が一切介入しない、子供たちだけの完全自律型組織」として完成されました。
もし、まともな監督がいて型にはめていたら、翼の自由すぎる発想(ドライブシュートやオーバーヘッド)は「ふざけるな」と矯正されていたかもしれません。
「監督がいなかった」からこそ、翼は大空翼になれた。
マネジメントにおいて「放置」は最大のリスクですが、相手が規格外の天才である場合に限り、それは「最大の育成」になり得るのかもしれません…

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